猫の輸血
…といきなりタイトルで心配される方もいるかもしれませんので、最初に書いておきますが、うちのニャンズはどちらも元気です。
かかりつけの病院で輸血が必要な猫さんがいて昨日から供血猫を探しているということで、実家のスタッフ猫が何頭か行ったのですがなかなか合わないという話を聞きました。
患猫さんの血液型は猫には珍しいB型(※人間のB型とは違います)で、日本の猫の中ではおよそ1割ぐらいなのだそうです。B型は洋猫に比較的多いそうで、うちのどう見ても日本猫な2ニャンではおそらくかすらないだろうと思いつつ、万一にでも合うことがあってお役に立てればとシャーロックを連れて行きました。ジョンは元々肝臓の数字に問題があるのと、実家にいる一族猫がすでに検査の結果不適合ということでおそらく同じだろうということで、今日は留守番です。
王子、うちに来た年は怪我の治療やおしっこでなくなったりで病院通いが続いていましたが、去年はワクチン以外には2回ほど歯肉炎を見せにいったぐらいでほとんど通院はありませんでした。リュックキャリーに入れられたのは初めてだったので最初は何が起こったのかわからなかったようでしたが、背中に担がれたとたんに普段とは全く違う声で鳴き叫んでいました。
結果が出るまでには1時間ほどかかるということで実家カフェでそのまま待機していましたが、結局不適合ということでそのまま帰宅しました。他にも卒業生やスタッフ宅の猫など数頭が検査していたのですが全滅で、輸血自体を再度検討することになったそうです。人間の場合は輸血に備えて血液バンクがありますが、犬猫にはそのような制度がありませんので、輸血が必要となると病院で用意している供血猫からとったり、今回のようにドナーを募ることになります。ですが、ドナーが適合するかどうかの検査費用は飼い主さん持ちなので、ドナーが出現するまで無尽蔵に検査というわけにはいかないですよね…。
検査結果を待っている間に、猫の血液型について調べてみました。
猫の血液型を決めるのは父親と母親からそれぞれ受け継ぐ血液型遺伝子です。遺伝子の種類はそれぞれ、「A型」「AB型」「B型」の3種類のいずれかとなり、両親から受け継いだ遺伝子の組み合わせ(遺伝子型)により発現する血液型が決まります。遺伝子はA>AB>Bの順に強いので、
- 組み合わせの両方がA型(「A-A」)、あるいはいずれか一方がA型(「A-AB」あるいは「A-B」)であれば、血液型は「A型」となります。
- 組み合わせが「AB-AB」もしくは「AB-B」であれば、血液型は「AB型」となります。
- 組み合わせが「B-B」のときのみ、血液型は「B型」となります。
実際に輸血が行えるかどうかは、レシピエントとドナーの血液で「クロスマッチテスト(交差適合試験)」を実施します。これは、それぞれの血液から赤血球と血漿を分離し、ドナーの赤血球とレシピエントの血漿・ドナーの血漿とレシピエントの赤血球をそれぞれ混ぜて反応を見て、赤血球がつぶのように固まる(凝集)反応がないことを確認するものです。凝集が起こった場合は拒絶反応ですから、輸血はできないことになります。血液型が異なれば凝集するので輸血はできませんが、血液型以外にも凝集に関わる遺伝子があるとも言われているため、輸血の前には血液型判定ではなくクロスマッチテストを行うことが一般的です。
クロスマッチテストで輸血可能となった場合、1頭の供血猫から採血できるのは体重1kgあたり10~12cc程度だそうです。体重5kgの猫で50~60cc。ちなみに猫の血液量は体重の6%だそうですので、体重5kgの猫であれば300cc程度です。供血する方も身体から2割の血液が消えてなくなるわけで、当然、一時的に貧血の症状も出ます。
なので、元気である程度体格が良く、若い猫でなくては供血できません。シャーロックは体重が4.1kgだったのでちょっと足りなかったかもしれませんね。
今回の患猫さんの詳しいことは聞いていないのですが、輸血ができなくても他の手段で良い方向に向かいますよう、お祈りしています。