マイクロフトのこと(2)
(その1から続く)
餌やりさん宅前にだいたい毎朝決まった時間にいることが分かったので、その時間を狙っておやつを持って行きました。3日めぐらいには、顔を見ると「なんかくれる人来た」という感じで「ニャ、ニャ」と言いながら出てきてくれるようになりました。触らせてはくれませんでしたが、シーバやCRISPY KISSなどのおやつで誘導はできるようになりました。
他の時間帯にも見回って朝以外にもいくつか出現時間帯があることを把握しました。近所の人から見ると、自転車で来て日傘さして水飲みながらじっと立ってる、相当怪しい人だったと思います。
通い始めて1週間ほど経ち、土曜日の午後に捕獲を試みました。この時はおやつを置く位置を少しずつ移動しながらキャリーバッグに誘導を試みたのですが、キャリーバッグの入り口をものすごく念入りに嗅いで中に入ってくれず、失敗しました。
その時に手伝ってくれた皆さんの意見で、キャリーバッグに押し込むにはちょっとサイズが大きすぎるのでは……という話になり、最終的には捕獲器を使うことにしました。餌やりさん宅の敷地内に置かせてもらい、その中でごはんをあげてもらいました。
捕獲に失敗した後2日ぐらい、私の顔を見ても近づいてきてくれなくなっていたマイクロフトも、3日めからは元通り挨拶してくれるようになりました。餌やりさん家の門の前で挨拶した後、1-2粒だけおやつをあげて、袋を見せながら敷地内に入り捕獲器の中に残りを入れる → 私が外に出るのと入れ替わりにマイクロフトが敷地内に入り、捕獲器に入っておやつを食べる、というルーティーンができました。
捕獲失敗の翌週の土曜日の午後、再度チャレンジしました。捕獲器に入ってくれても上手く閉まらなかったりして逃げられたらもう2度と入ってくれないだろうと思うと不安で、慣れた人に手伝ってもらい、捕獲器と釣り餌を仕掛けました。
セット完了して5分もしないうちにマイクロフトが現れました。なるべくいつもどおりに、でもドキドキしながら門の前でおやつをあげて、捕獲器の前まで誘導した後、少し離れた場所で待機していると、すぐに捕獲器が閉まる音がしました。
仕掛けをしてくれた人に「入った」とメッセンジャーを入れて捕獲器のところに行くと、今まで聞いたことのないようなだみ声で鳴きながら暴れています。ストッパーを確認して、カバーを掛けて、敷地外まで運び、迎えにきてくれたスタッフに猫カフェまで搬送をお願いしました。
土曜日の午後でまだ動物病院があいている時間だったので、猫カフェでレボリューションと爪切りしてもらい、そのまま病院につれていきました。ワクチンと血液検査とウィルスチェックして、血液検査の結果は正常。ウィルスチェックもエイズ・白血病とも陰性でした。大部屋入れる。預かりできなくても、リリース考えて悩まなくていい。よかった……
その日の夕方、捕獲器を置かせてくれた餌やりさんに食器を返しに行き、里親募集することを報告しました。「7年前にリリースしたうちの子のお兄ちゃんをようやく保護できました」と言うと、「あらやだ、チャコは女の子よ?」と……ん?
茶トラだし右耳カットだし♂だと思って名前までつけちゃったよ!今更他の名前もしっくりこないので、マイクロフトがシャーロックの姉だったワールドがあってもいいじゃん!ってことで脳内解決しております。
現在マイクロフトは大部屋に行く前の隔離期間中です。きちんと排便排尿はあるので健康は問題ないと思います。顔つきは少しずつ和らいできましたが、まだ人が見ている時にごはんは食べられないしトイレから出ることができないし、触ろうとすると猫パンチ連射(ただし爪は出ていない)をお見舞いされます。トイレは隠れ場所に決めてベッド代わりの座布団をトイレにするし。
そんな様子を見ていると、マイクロフトはこの7年間はどんな暮らしをしていたんだろうと考えます。
毎日決まった場所でごはんがもらえて雨やどりができる小屋もある生活は、普通の地域猫に比べればとてもありがたく、恵まれていました。それでも、台風や、大雪や、花火の音や、40℃近い酷暑に、シャーロックがふわふわの布団で寝て窓の中から外を見ていた時に、マイクロフトは硬い地面の外で耐えていたのです。
7年前にたまたま怪我をしていたかいなかったかで人が運命に線を引いてしまったけれど、それでもここまで健康に生き残ってくれて、再びやり直すチャンスをくれてありがとう、と思うのです。
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